⑤ 祇園祭限定の「名水」を飲む
御手洗井
祇園祭の期間中(7月15日から24日まで)のみ、一般に開放される「御手洗井」。
普段は閉じられているため、京都在住でもその存在を知らない人が少なくありません。

実は、この井戸を市民に開放したのは、織田信長です。
もともとこの場所には四条御旅所1がありましたが、信長が上洛した1568年に移転させられました。しかし、井戸の水が「名水」であることを知った信長は、祇園祭の期間中だけ人々に開放するよう命じました。下々の者には優しいな第六天魔王よ
彼はこの上洛戦で天下統一に王手をかけ、それはついに達成されませんでしたが、この井戸の伝統は今なお続いているのです。

地下70メートルからの湧水2で、飲用可能。京都には、土用の日にこの井戸の水を飲み、あんころ餅を食べると一年間健康に過ごせるとの言い伝えがあります。
御手洗井:京都府京都市中京区手洗水町
ホテル日航プリンセス京都
ホテル日航プリンセス京都では、下鴨神社や京都御所と同じ地下水脈から汲み上げた天然水を全館で利用しています。
普段は宿泊者しか口にできませんが、実は夏季限定で1階ロビーにて無料提供されているのです。3

ホテルは、他の山鉾から少し離れた保昌山の近くに位置しています。水だけでなく、一緒に提供されている塩飴も一味違います(私見)。
ホテル日航プリンセス京都:京都府京都市下京区高橋町630
⑥ 現代人ならではの特権を味わう
復活した山鉾
何らかの理由から巡行に参加できなくなった山鉾は、「休み山」と呼ばれます。
例えば、大船鉾は1864年の禁門の変で、鷹山は1826年の懸装品損傷で、それぞれ休み山となりました。
休み山からの復活は費用面などの理由から困難ですが、大船鉾は2014年に150年ぶり、鷹山は2022年に196年ぶりに見事復活を遂げました。4
これらは、もし私たちが明治時代や大正時代に生まれていたら、ほぼ姿を見ることができなかった山鉾なのです。
後祭
祇園祭の後祭は、前祭に比べると、驚くほど知られていません。場合によっては、存在すら知られていないことも。
この知名度の低さは、後祭が1966年から2014年まで休止されていたせいもあるでしょう。
こちらも、現在でなければ見ることができなかった祭りですが、前祭ほど混まないのもメリットですよ。
⑦ 祇園祭限定の和菓子を楽しむ
食べられる粽
粽(ちまき)は祇園祭につきものですが、これは玄関先に吊るして疫病を追い払うための飾りなので、食べることはできません。

しかし、唯一食べられる粽が存在します。それが、鷹山で宵山期間中に販売される「厄除けういろう粽」。5

笹の葉に白いういろうが包まれており、江戸時代には病気平癒の効能があると人気を博したそうです。
鷹山以外では、「伊勢源六たちばなや」のウェブショップでも期間限定で販売されています。
年に一日だけ販売される餅
祇園祭限定の和菓子は、三條若狭屋の祇園ちご餅、占出山の吉兆あゆなど数多くありますが、中でも私が特におすすめしたいのは、柏屋光貞の「行者餅」です。

クレープ状の薄い生地で求肥と白あんを包んだもので、山椒がアクセントとして効いています。独特の風味が、まさに絶品。
しかし、毎年7月16日のたった一日しか販売されず、数量も限定。現在は店頭販売のみ。年々、入手のハードルは上がりるばかりです。
行者餅以外なら、菊水鉾の名物である「したたり」もおすすめです。
黒糖や和三盆が使われた琥珀寒(こはくかん)で、その涼やかな見た目と上品な甘さが夏にぴったりです。

ただ、こちらは実は通年「亀廣永」で購入できるので、祇園祭限定ではありません。通常の京都土産としても喜ばれると思います。
⑧ 期間限定で京都の町中に現れる「美術館」に行く
屏風祭(びょうぶまつり)は、祇園祭の宵山期間(前祭:7月14日~16日、後祭:7月21日~23日)に、山鉾町にある旧家や老舗が、代々受け継いできた美術品や調度品などを特別に一般公開する伝統行事です。
その名の通り屏風が中心ですが、着物や武具などが飾られることも。山鉾巡行が「動く美術館」と称されるのに対し、屏風祭は「静の美術館」とも呼ばれます。
それぞれの品々は、美術館のような展示ではなく、部屋の一部として自然に「しつらえ」られています。
来場者はお宅にお邪魔して、当時の生活空間の中で美術品がどのように存在していたのかを肌で感じることができます。

開催場所などは、こちらをご参考に。6
脚注
- 神幸祭と還幸祭の間、神様が滞在される場所。 ↩︎
- 現在の井戸は、明治45年3月烏丸通拡張のために現地に移された二代目です。 ↩︎
- 2024年の提供期間は6月から10月頃、提供時間は10時から18時でした。訪れる際には、事前にご確認ください。 ↩︎
- 現在の休み山は、布袋山のみ。 ↩︎
- 食べられる粽を鷹山で売っている理由は、鷹山の三柱のご神体のうちの一柱が、粽を召し上がるお姿の樽負様だからです。そのゴキゲンそうなお顔から、彼の粽に対する愛を感じます。 ↩︎
- ただ、屏風祭への参加世帯は、世代交代の度に減少しており、この地図に載っているお宅でも既に不参加となっているところが少なくありません。もし屏風祭をご覧になりたいなら、なるべく早いうちに行かれることをお勧めします。 ↩︎





