”前世”の私(2)
彼(前世の私)は独身の町医者で、坂を上り切る直前にある、パン屋の2階を間借りしていました。
だだっ広い部屋には机と本棚とベッドしかなく、まさに”殺風景”そのものでした 。
大きいけれど粗末な作りの本棚には専門書や詩集がまばらに入っていましたが、聖書はありませんでした。
えっ?西洋人なのに?と内心思いました

朝、小さな診療所に出勤し、夜は帰宅して眠る、彼の生涯はほぼそれだけでした。
酒や煙草、パーティーや娼館などには一切無縁の、まるで修行僧か某ハリウッドスターくらい、

ただ静かに、日々を過ごしていました。
治療費が払えない患者は無償で診察するなど、彼の中には、今自分が感じるような「欲」の感覚は一切ありませんでした。
前世の私(3)
彼は、そこそこ裕福な社会階級の、厳格な父と従順な母にもとに生まれました。
初等教育から寄宿舎で過ごし、勉強を含むルーティーンを淡々とこなして育ちました。
卒業後の進路として、教師から神学者と医師を提案され、「”現実的に”人を救える」という理由から医師を選択しました。
”前世”の私(4)
パン屋には主人以外に、通いで来ている10代の娘がいました。
彼女は栗色の髪でそばかすがあり、フランダースの犬に出てくるアロアのような帽子をかぶっていました。

美人ではないけれど、華奢でつぶらな瞳は小鹿のように愛らしく、村の人たち同様、彼をとても慕っているようでしたが、恋というよりは、無邪気で信頼感ダダ洩れの「大好き」なのが明らかでした。
彼も彼女を可愛いな……とは思いつつ、劣情に駆られるでなく、「まあ、歳の差もあるしね……」などと、一人ひっそり完結していました。
毎朝、彼女が自分の部屋のドアをノックして、階下の食卓に朝食が用意できたと呼びに来るのが”偽キ○ヌ”のささやかな楽しみでした。
前世の私の死
彼は、40代半ばで亡くなりました。
ある朝、目覚めると身体がひどく重く、どうしても体を起こせませんでしたすことができませんでした。
医師として客観的に判断し、「ああ、このまま自分は死ぬのだな」と冷静に思いました。
彼は、ぼんやりとした意識でベッドからドアを眺め、「あのドアが開き、最後に彼女の顔を見ることができたらいいのにな」と思いました。
でも、きっとそうはならないだろう……と直感的に思い、淡々と最初の案を却下しました。
もし、ノックに返事がなければ彼女はドアを開け、死んでいる私を見つけて驚くだろう。
若い娘にとって、それは大変なショックだろう。
可哀相なのでなんとかしたい、
でも、それは”不可抗力”だろう、とこれも淡々と却下しました。
彼女は悲しんでくれるだろうか、となんとなく思った後、できればあまり悲しませたくないな、と思いました。
次に気が付いた時、彼はまったく訳が分からない状況にいました。


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