祇園祭における二つの誤解
毎年、世界中からあれほど多くの人が訪れるにもかかわらず、ほとんどの観光客は、祇園祭で最も重要な行事のことを知りません。それは主に、二つの誤解があるためです。
一つ目は、「祇園祭は、前祭の宵山と山鉾巡行だけの4日間しかない」という誤解。二つ目は、「祇園祭には神輿が出ない」という誤解です。
以前、カフェでおばちゃんグループの雑談に割り込みたくなったこともありますが、祇園祭に神輿は出るし、なんなら、それに乗っておられるのが祇園祭の主役です。
祇園祭のメインイベント
祇園祭の基本情報
まず、祇園祭は7月1日から31日までの1ヶ月間、八坂神社と氏子地域で行われる神事や行事の総称です。また、祇園祭の目的は、疫病の退散祈願です。
9世紀末、平安京では長期にわたりマラリア、天然痘、インフルエンザ、赤痢、麻疹など数多の疫病が流行していました。陰陽師が占った結果、それは早良親王などの怨霊のせいと出たため(当時、疫病は怨霊の祟りだと考えられていました)、祇園社で行われた御霊会(869年)が、祇園祭の始まりです。
メインイベント
八坂神社の主祭神の一柱である素戔嗚尊(スサノヲノミコト)は、疫病退散の力を持つ牛頭天王と習合しているので、素戔嗚尊も疫病退散の力を持つと信じられています。
祇園祭では、彼と奥様、そのお子様方に神社から町にお越しいただき、町にいる厄神を、直接退治してもらいます。
彼らに神輿で町までお越しいただく行事が、神幸祭。一週間、御旅所にご滞在いただき、また神輿で神社にお帰りいただく行事が還幸祭です。
つまり、祇園祭の目的から考えれば、これらの行事がメインイベントだと言えるでしょう。
神様から行事を比較する
神幸祭と還幸祭
神幸祭と還幸祭(以下「神・還幸祭」)の主役である素戔嗚尊は、創造神・伊弉諾尊の息子であり、最高神・天照大神の弟です。また、彼も、彼の妻である櫛稲田姫命(クシイナダヒメノミコト)も国津神。神格が非常に高い神々です。
宵山
各山鉾にはご神体※ がいますが、素戔嗚一家には及ばないでしょう。
※ 山鉾のご神体については、こちら👇
山鉾巡行
山鉾は、神・還幸祭の際の神様の通り道を清めるために巡行し、町にいる厄神を集める装置です。いわば掃除機のようなもの(だから、山鉾巡行が終わるとすぐに、厄払いのために解体されます)。
巡行中の山鉾は、厄神がパンパンに詰まった箱です。
結論
関係する神様から比較しても、神・還幸祭が最も重要なのは明らかでしょう。
そもそも、まず神・還幸祭の日時ありきで、山鉾巡行はその準備、宵山は前夜祭です。すべては、御旅所滞在(と神・還幸祭)のためなのです。
知名度が低い理由
メインイベントにもかかわらず、神・還幸祭の知名度がこれほど低い理由は単純で、どちらも神輿が夕方に出発し、行事終わりが深夜になるからです(2024年の神幸祭終了は24時)。市内在住でなければ、参加しづらいでしょう。
ただ、最近はYouTubeなどで中継されています。三基の神輿が約8キロの道のりを掛け声とともに練り歩く熱気と躍動感は、きっと画面越しでも伝わると思います。
なお、私の祇園祭一押しアクションは、御旅所への参拝です。バリバリの国津神を、これほどの至近距離で拝めるチャンスは、そうはありません。
御旅所は四条通沿いにありますが、早朝は混雑を避けて参拝できますよ。
八坂神社 御旅所:京都府京都市下京区貞安前之町
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