はじめに
祇園祭には、毎年世界中から多くの人が訪れます。でも、ほとんどの観光客は、祇園祭のメインイベントを見ていないし、むしろ存在すら知らないまま京都を去っています。

それは、彼らが祇園祭について決定的な勘違いをしているからです。
祇園祭の基本情報
多くの人は祇園祭を前祭の山鉾巡行と宵山だけだと誤解しています。でも、祇園祭は八坂神社と氏子地域で7月1日から31日までの1ヶ月間行われる、数十にわたる神事や行事の総称なのです。
9世紀末の平安京では、マラリア、天然痘、インフルエンザ、赤痢、麻疹など多くの疫病が長期に渡って流行していました。陰陽師による占いでそれは早良親王などの怨霊が原因と出たため(当時、疫病は怨霊の祟りだと考えられていました)、感神院祇園社(現在の八坂神社)で霊を鎮めるための御霊会が行われました。
これが祇園祭の始まりです。
祇園祭の目的は、疫病の退散祈願なのです。
神幸祭と還幸祭
感神院祇園社では疫病退散の力を持つ牛頭天王が祀られていました。牛頭天王は、海神などとして知られる素戔嗚尊(スサノヲノミコト)の本地1とされたので、素戔嗚尊は疫病退散の力も持つことになりました。
現在の八坂神社の主祭神は素戔嗚尊一家2ですが、祇園祭には彼らに三基の神輿に乗って町までお越しいただき、町にはびこる厄神を直接退治してもらう行事があります。

町までお越しいただく行事が神幸祭。神社にお帰りいただく行事が還幸祭。
前述した通り、祇園祭の目的は疫病の退散祈願なので、祇園祭の本当のメインイベントはこの二つなのです。
山鉾巡行と宵山
じゃあ、多くの人がメインイベントと思っている山鉾巡行と宵山が何かというと、山鉾巡行は神幸祭(7月17日夕刻~)と還幸祭(7月24日夕刻~)の下準備、宵山は前夜祭です(表1)。

山鉾は厄神がはびこる街に神聖な神々をお迎えするために、神々にお通りいただく道にいる厄神を集めて清める装置。いわば、巨大な掃除機です(だから、山鉾巡行が終わるとすぐに、厄払いのために解体されます)。
多くの人が殺到して鑑賞しているあの巡行中の山鉾は、厄神がパンパンに詰まっている箱なのです。
知名度が低い理由
神幸祭と還幸祭の知名度がこれほど低い理由は単純です。神輿が夕方に出発し、行事終わりが深夜になるからです(2024年の神幸祭終了は24時でした)。
最近はyoutubeに中継動画がアップされているので、遠方からでもチェック可能になっています。
なお、私の祇園祭一押しアクションは、御旅所3への参拝です。

素戔嗚尊や櫛稲田姫命ほど神格が高く4、あれだけ四六時中多くの人々に参拝されてエネルギーを蓄えている神々に、こんな近距離で参拝できるチャンスはそうありません。是非ロウソクをお供えしてご挨拶しましょう。
御旅所は四条寺町にあるので、観光の途中にも立ち寄りやすいですよ。
八坂神社 御旅所:京都府京都市下京区貞安前之町
脚注