本当の最善を受け取る方法：八方善しの祈り

想像を超えた最善を受け取るには

私たちは願いごとをするとき、「〇〇が叶いますように」と具体的な内容を願います。

しかし、それは無限にある可能性のうちの「自分が想像できる最善」にすぎません。

ときには、願いが叶った後に「思っていたのと違った」と感じることもあるでしょう。

今回は、私自身の体験を通じて、「本当の最善が得られる願い方」について考察します。

私の親友のお父様が病に倒れ、危篤状態に陥った時のことです。

彼の家族は皆医療従事者。容態を正確に把握した上で葬儀やお墓の準備も進めていました。

しかし親友と電話で話した時、涙声で「父には病の兆候などなかったのに」「大学で家を出てから父と会った時間を合計しても2ヶ月に満たない」と言いました。

冷静であろうとしても、感情は理屈では抑えきれないものです。

彼が悲嘆や恐怖よりも強く抱いているのは、激しい後悔の念のように感じられました。

もしお父様がこのまま亡くなれば、その後悔を直接解消できる機会は永遠に失われるでしょう。

私は願掛けをするため、遠方にあるお気に入りの神社へ向かいました。

しかし神前に立った時、ふと迷いました。

親友一家にとっての「最善」は父親の延命です。

ただ、お父様はこれまで社会に貢献し、健康にも留意してきた方です。

もしかすると今が予定通りの寿命かもしれません。

もし延命を願って叶ったとしても、それが本当に良いことなのか、私には分かりませんでした。

そこで私は「八方善し（はっぽうよし）」を願うことにしました。

つまり、「すべてが終わった時、お父様自身や親友、ご家族全員にとって最善の形になりますように」と、具体的な願望を手放し、神に委ねたのです。¹

その後、お父様は驚異的に回復して退院。数年間を自宅で過ごすことができました。

親友は月に一度は帰省して、父と食事を共にしたり、贈り物を手渡したりして、得られた猶予を精一杯活かしました。

最期に病室で父と二人きりになった際には、「この人生に満足している」という言葉も聞けたそうです。

お葬式の後、家族で「父が亡くなったタイミングは誰にとっても最善だった」と話し合い、親友自身も悔いは全くなかったそうです。

「これが『八方善し』の効果か」と私は心のなかで納得したのでした。

もし私が「延命」を願っていたら、別の結果がもたらされていたかもしれません。

お父様は生還後、週に2～3回、1時間以上かけて路線バスで通院していました。そして、8時間以上ベッドに寝たまま治療を受けていました。

これは亡くなる直前まで続き、お父様にとってもお母様にとっても大変な負担となりました。

遺族は今、一連の出来事をポジティブに捉えています。それは生還によって得られた家族との時間や対話という「メリット」が、通院などの「デメリット」を上回ったからです。

願い方を違えていたら、その結果に苦しむ未来を招いていたかもしれません。

お父様の生還には、もう一つ大きな要因があると私は考えています。

それは、お父様の心の持ち方です。

彼は医師だったので、自身の病状を理解していたはずです。

しかし、病床では普段通りに読書をしたり、見舞客と話したり、時には先の予定を入れたりして、穏やかに過ごしていたそうです。

過度に死を恐れたり病気を憎むような「強いエゴ」に囚われていなかったので、「最善」を受け取る準備が整っていたのです。

私の祈りが叶う道筋をつけてくださったのは神様ですが、それを現実化してくださったのはお父様ご自身だったのでしょう。

最善の願いを叶える方法は、特定の結果ではなく、「最善そのもの」を願うことです。

そして、現実ではなく自分の内面に意識を向けることが大きな助けになるでしょう。

あなたの願いが想像を超えた最善の形で叶いますように。

脚注

この後、「もしこの死が避けられない出来事ならば、彼らが感じる痛みを最小限にし、また、彼らが心から納得できるような要素を与えてやってください」と付け加えました。 ↩︎