はじめに
親や恋人、友人など、自分を苦しめる相手だと分かっていても関係を断ち切れないことがあります。
やっと離れられても、また同じような相手を選んでしまう。
そんな経験を持つ人は、きっと少なくないでしょう。
堂々巡りから抜け出す鍵は、自分がこれまでの人生で無意識に作り上げてきた思い込みの正体に気づくことです。
今回はMさんという女性を例にとり、思い込みから解放され、自分を取り戻す方法について、全三回にわたって考察します。
まず前編では、彼女が抱える苦しみの構造と、その出発点となる家族の物語を見ていきます。
Mさんの人物像
Mさんは明るく誠実なシングルマザーです。
誰に対しても分け隔てなく接するので、どこに行っても「いい人」と慕われます。
美容関連の仕事で培ったセンスから、お金をかけずに品よく見せるファッションの達人としても評判です。
しかし、パートナーからだけは一貫して軽んじられてきました。
繰り返されるパターン
最初の結婚
Mさんは若くして大恋愛の末に結婚しました。
ところが結婚後、夫は元交際相手と不倫関係に。
その女性は、自分の子どもにMさんの夫を「パパ」と呼ばせていました。
異様な状況を見かねて、周囲は離婚を勧めましたが
「それでも彼を愛している」
「家族は一緒にいるべき」
と彼女は頑なに拒否。
しかし、夫が不倫相手との密会に我が子を連れ出し、さらに口止めまでしていたことが発覚したとき、周囲が驚くほど速やかに離婚を決めました。
理由はただ一つ、「子どもに悪影響があるから」です。
離婚後の恋人
ところが、離婚後に選んだ恋人も、やはり彼女を粗末に扱う人物でした。
たとえば、付き合って初めての彼女の誕生日に元妻が置いていった鞄を贈ろうとするなど。
最終的には彼の身勝手な行動のせいで、Mさんは入院を余儀なくされました。
幼少期に作られた思い込み
こうした相手ばかりを選んでしまうのには、幼少期の体験が関係しているかもしれません。
Mさんの父親は社交的で、人を招くのが好きな人でした。
一方、母親は他者を家に入れることを嫌い、自分のルールを厳格に守るタイプでした。
母親に否定され、寂しそうな父の姿を見て、彼女は「将来は、夫を自由にさせてあげたい」と感じるようになります。
また母からは、学業優秀な弟妹と常に比較され、アルバイト代で買った化粧品や洋服を「下品」だと禁止されることもありました。
彼女の中には、「相手の望む形に自分を合わせる癖」や「自分の尊厳を後回しにする感覚」が自然に根づいていったと考えられます。
同じ苦しみを繰り返す理由
夫の裏切りや、恋人からの不当な扱いは、Mさんの尊厳が守られていないことの証拠です。
彼女は何度も同じ痛みに直面しています。
しかし、問題の核心から目を逸らし続けています。
その理由は大きく分けて二つです。
一つは、自分を後回しにする生き方を、どうしても手放せずにいること。
もう一つは、痛みに耐えるために、感覚を鈍らせる癖が身についていることです。
心の痛みという信号
スピリチュアルの視点では、心の痛みは「今の生き方が自分の本質からズレている」ことを知らせる信号です。
しかし、ものごとを感じる感覚が鈍ると、信号に気づきにくくなります。
ズレが修正されないままなので、形を変えた同じ問題が、繰り返し現れることになるのです。
前編まとめ
Mさんの堂々巡りの背景には、幼少期の環境からの影響や、その後の人生で身につけた適応の仕方があります。
次の中編では、彼女の苦しみの元凶と、なぜ彼女がそれを手放せないのかについて掘り下げていきます。


