【新年限定】良い一年を強引に実現する古の秘法

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初夢宝船

かつて日本には、初夢でその年の運勢を占う習慣がありました。

初夢が吉夢なら、その年は良い一年。それなら、初夢を吉夢にすればよいのでは?

初夢宝船は、そのような強引すぎる発想に基づいたおまじないです。

「初夢用・七福神宝船絵」江戸東京博物館・蔵

初夢宝船は、室町時代から存在しており、江戸時代にはこれを売る行商人がいたり、大正時代には神社で初詣の参拝者に配布されていたり、明治時代の新聞では正月の風物詩として挙げられていたりなど、広く一般に知られていました。

※ 書かれている和歌の出典が、『運歩色葉集(1548年)』や『日本風土記(1592年)』と考えられるため


でも、戦前に、ほぼ途絶えてしまったため、現代ではほとんど知られていません。

初夢宝船のやり方

初夢宝船のやり方は、とっても簡単です。

① まず、初夢を見る前の晩、初夢宝船の紙を用意します。現物が手に入らなければ、画像を検索して印刷するとよいでしょう。

② 寝る前に、紙に書かれた和歌、「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな※2 三回唱えます。

※2(長き夜の 遠の睡(ねむり)の 皆目醒(めざ)め 波乗り船の 音の良きかな)

③ 紙を枕の下に敷いて寝ます。いい夢見ろよ。

初夢はいつ見る夢か

初夢を見る日には、一月説と二月説があります。

一月説(室町時代以降)

大晦日(12月31日)の晩
室町時代から江戸初期までの説です。

元日(1月1日)の晩
江戸中期(天明)から後期にかけての説。当時は、年越しの夜に寝ない習慣があったからだとか。

1月2日の晩
江戸後期以降の説。多くの新年の行事(初商い、書初めなど)が二日に行われていたため。

二月説(平安時代、関西)

もともと初夢は、節分の晩(立春)に見る夢のことでした。

初夢宝船よりも前、平安末期に書かれた『山家集』には「立春の朝よみける」と添え書きされた初夢の短歌があります。

また、一月説が主流だった江戸とは違い、京阪神では二月説が長らく支持されていました。

総評

初夢を見る日は、上記のどれでも良さそうです。

ただ、立春は「太陽黄経が315度のとき」なので、暦の新旧や習慣などに影響されません。また、明治の改暦以降は、”元日の晩”説が主流のようです。

吉夢について

日本で吉の初夢といえば、「一富士、二鷹、三なすび」が有名です。由来については、掛け言葉※3 や徳川家康の好きなものなど、諸説あります。

四以降はあまり知られていませんが、通常版が、四扇五煙草六座頭。逆夢版が、四が葬式、五が雪隠や糞、火事だそうです。

しかし、座頭は現代だと何になるんでしょうね。

※3 富士は無事、鷹は高い、なすびは成す

凶夢を見た場合の対処方法

初夢宝船で凶夢を見た場合、夢見に使った紙を川に流して「なかったこと」にしていたようです。川の澱みに紙が溜まる様子を詠んだ、江戸時代の川柳もあります。

しかし現代では、多くの自治体が河川へのゴミ投棄を条例で禁止しています。紙を処分する方法としては、お守りやお札を自宅で処分する方法に倣い、「紙で少量の塩を包み、燃えるゴミの日に出す」のも一つでしょう。

ただ、和歌が回文なのは、凶夢を吉夢にひっくりかえす仕掛けと見なすこともできそうです。もしかすると、元となる呪術などがあるのかもしれませんね。

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